岩手大学工学部建設環境工学科
地下計測学研究室

1996 Faculty of Engineering, Iwate University


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微動探査とは?


微動探査という言葉は厳密には定義されていない。ある人は、観測された微動の平均周期、卓越周期を用いて、地盤種別を判定する方法であるというだろう。ある人は、地震時の地盤の応答を常時微動の振動特性によって近似するための探査法というだろう。また、これらとは別に、地下の弾性波速度構造を推定するのに微動を利用する方法であるというだろう。これらは、数多くの研究者、実務者によってそれぞれ利用されているが、理論的、実用的の両面を完全に満足する手法とまでは至っておらず研究の展開が期待されている分野である。

微動とは読んで字のごとし’微かに動く’振動である。
地表面は、いつでもどこででも人体には感じられない程度に微かに振動している。この振動を励起する原因は多種多様であり、例えば、気象・海象などの風、波浪等による自然現象、工場振動、車両の通行による振動等の人間活動による人工現象が考えられる。
微動はいつでもどこにでも存在するため観測が非常に容易である。微動に含まれる地下の情報を抜き出すことができれば、従来の探査法に比べ、探査法として経済的に有利である。また、都市部における探査では、従来の探査法では火薬等を用いた人工震源利用などにより種々の環境問題が発生する可能性があるが、微動を利用した探査法ではそれが皆無である。

微動探査法として、理論的にも完全であり、実用的にも今後に効果が期待される手法として、アレイ(センサーの郡列配置)観測による微動の位相速度を利用した地下速度構造推定法があげられる。これは、微動計(地震計)を地表面に複数配置し微動を観測し、周波数−波数解析法などを利用して各周波数ごとの微動の位相速度(波の伝わる速度)を推定する手法である。微動の主成分が表面波である場合、その位相速度は地下構造に依存した分散現象(周波数ごとに位相速度が変わっていく現象)を示すため、逆解析により地下の弾性波速度構造が推定可能である。

語句の説明

  1. 周波数−波数解析法(Frequency-Wavenumber Analysis: F-K法)
    波動は時空間座標で記述される関数である。時空間領域で観測された波動をフーリエ変換の手法を用いて、時間領域から周波数領域へ、空間領域から波数領域へ変換する手法。ある周波数において、周波数−波数スペクトルの最大パワーを示す波数から波動の位相速度が推定可能である。

  2. 位相速度(Phase Velocity)
    波の位相が伝わる速度、位相速度に対して波のエネルギーが伝わる速度を示す群速度がある。

  3. 表面波の分散現象(Surface Wave Dispersion Relation)
    表面波はその性質から周波数ごとに位相速度が変化する。これは地下の構造に依存する。すなわち、一般的に考えられる地中深くなればなるほど地盤・岩盤が堅くなるような構造では、低周波の表面波ほど位相速度が大きく、高周波の表面波ほど位相速度が小さい。

  4. 微動(microtrmor, seismic noise)
    地表面は実はわずかな振幅で常時揺れている。この微少な振動を微動という。他の呼び方として、常時微動、雑微動などがある。微動は波動であるため、対象とする周期帯によって、短周期微動(1秒以下)、長周期微動(1秒以上)と呼ばれる。

  5. 地震(earthquake)

    地中の断層が急激に動くことにより振動が発生し、地表面にまで伝わる一連の現象。この現象を分解すると、(1)地震の断層運動による高周波波動の発生(震源過程)、(2)波動の伝播、(3)地表付近の地盤による増幅となる。

  6. 弾性波(elastic wave)

    物体の弾性的性質により発生する波動。P波、S波などの実体波や、レイリー波、ラブ波などの表面波がある。

  7. 表面波(surface wave)

    地表面付近に波動のエネルギイが集中し、地表面に沿って伝播する波動。地下の弾性波速度構造、密度構造に依存して、分散現象が生じるのが特徴。

  8. 分散現象(dispersion)

    波動の速度(位相速度、群速度)が周期によって変化する現象。一般的な地下構造では(地下ふかくにいけばいくほど物質が堅くなる構造では)長い周期ほど速度が早く、短い周期ほど速度が遅い。

参考文献





山本英和(Hidekazu YAMAMOTO)
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Department of Civil and Enviromental Engineering, Faculty of Engineering, Iwate University, 4-3-5, Ueda, Morioka, 020, Japan


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