揮発性有機化合物(VOC)と重金属類による土壌・地下水汚染の浄化技術を検討しています。
 東北においてもっとも大規模な土壌地下水汚染は岩手県・青森県境不法投棄による汚染です。揮発性有機化合物による汚染でが下図の示す通り多く見つかっています。特にジクロロメタン、テトラクロロエチレンの環境基準をそれぞれ16500倍、950倍と大きく超過している地点もあり、問題となっています。また、これらの物質は難生分解の物質であり、さらに比重が1よりも大きいために、土壌中に排出されると不透水層まで到達し、深部まで汚染を引き起こします。このため、土壌・地下水汚染は不法投棄された廃棄物を撤去しても、地下の深部に残留しており、その処理を必要とします。
 また、都市部における地下水土壌汚染は、地価が高いために処理コストを要しても、浄化が行われます。しかし、県境に不法投棄現場における地下水土壌汚染のような山間部における汚染の浄化には大きな処理コストを掛けることは困難になります。そのため、安価な処理方法で、環境への負荷が小さい方法が求められています。
       




【揮発性有機化合物による汚染の浄化方法の開発】

研究テーマ: 不法投棄現場の地下水から採取した微生物による
ジクロロメタンの分解
 地下水・土壌汚染の修復技術の一つにバイオレメディエーション(微生物浄化法)があります。この方法は、汚染現場にいる微生物を活性化、または汚染物質を分解する能力を持つ微生物を汚染現場に土壌に添加し、汚染物質を分解する方法です。微生物をもちいるため、化学薬品等を用いるよりも環境への負荷が小さく、低コストに処理することができます。
 本研究室では岩手県・青森県境不法投棄現場のジクロロメタン(DCM)が検出された地下水を採取し、それを栄養塩とジクロロメタンにより微生物を培養した結果、ジクロロメタンを分解する微生物の存在を確認しています。この微生物がどのような条件で分解反応を進行するのか、そしてジクロロメタンの分解後に何が生成しているのかを検討しています。
     


研究テーマ: 太陽光を用いた揮発性有機化合物の分解
 現在行われているVOCによる地下水汚染の浄化方法で最も多く用いられている方法は地下水揚水法です。この方法は汚染地下水を揚水して汚染物質を活性炭に吸着させる方法です。しかし、この方法では汚染物質が吸着した活性炭の処理が必要となります。そこで、揚水後の地下水を原位置で酸化分解する方法が検討されています。しかし、これらの方法も紫外線照射やオゾンの発生に費やされる電力、処理に用いるpH調整剤などの影響で必ずしも低コストの処理方法であるとはいえません。
 そこで、本研究室では有機酸と鉄イオンの錯体を用いた光反応(下図)に着目し、その反応を有機塩素化合物の分解を検討しています。この反応は錯体に太陽光が当たることによって、酸素から過酸化水素が生成し、この過酸化水素と鉄イオンのフェントン反応により強酸化剤のヒドロキシルラジカル(HO・)が生成すると言われています。この反応を利用して、太陽光を用いた低コストの有機塩素化合物分解法を検討しています。
          



【重金属類による汚染の浄化法の開発】

研究テーマ: クロム汚染土壌の磁選分離
 重金属類による地下水・土壌汚染は、有機化合物とは違い分解除去することはできないため、地下水・土壌からの汚染物質の分離、または汚染物質が人へ健康リスクを与えないようにする状態にすることが浄化技術となります。汚染物質が人へ健康リスクを与えないようする技術には不溶化(汚染物質が土壌から溶け出さないようにする)、封じ込め(汚染土壌を囲み他の環境に影響を及ぼさないようにする)、汚染土壌の掘削除去等の方法があります。しかし、掘削除去は汚染土壌の全てを掘削する膨大なコストと大量の産業廃棄物が発生します。また、封じ込めは土壌中に汚染物質が残ってしまうため、低コストに土壌から汚染物質を分離できる技術が求められている。
 そこで、本研究室では、クロム汚染土壌浄化方法として磁選分離による浄化方法(下図)を検討しています。この方法は土壌を水と混合し、それを電磁石の通すことによって、磁着物は磁場中に捕捉され、非磁着物のみが磁場中を通過します。この後とに電磁石のスイッチをオフにすることで、磁着物が流れでるため、磁着物と非磁着物を分離することができます。この方法を用いると磁着物の方にクロムの汚染土壌が濃縮されます。この濃縮された汚染土壌のみを産業廃棄物とし、非磁着物の浄化土壌は再びその土地に埋め戻すことができます。
       

1. 廃棄物をリサイクルするための分離技術の開発