1. 廃棄物をリサイクルするための分離技術の開発

【金属と非金属の分離】

 家電製品の多くは有価金属(鉄、銅、アルミ等)を多く含んでいるが、非金属(プラスチック、繊維、ゴム等)との混合物で存在します。これをリサイクルするためには、有価金属と非金属を分離しなければならなりません。特に、コンデンサーや半導体などの少量物の分離は困難です。こういった金属と非金属の分離には、非金属よりも金属の方が比重が大きいため、この差を利用した重液(金属と非金属の間の比重の溶媒)を用いた比重分離法が用いられていられています。しかし、重液を用いた湿式の比重分離では、重液の洗浄、洗浄液の乾燥、廃液の処理が必要とします。そのため、これらの工程がいらない乾式の分離方法が求められています。
         


研究テーマ: 揺動テーブルによる金属と非金属の分離法の開発
 微少な金属と非金属の分離方法を開発するために、廃コンデンサーを粉砕したサンプルを用いて実験を行っています。廃コンデンサーの中にはニッケル、鉄、アルミニウム、プラスチック、紙、ゴムなど(全て直径約1mm)が含まれています。ニッケル、鉄は、磁石により分離することができますが、アルミニウムは、プラスチック等の非金属と分離することは困難です。
 本研究室ではこの分離に揺動テーブルを用いた方法を検討しています。粉砕した廃コンデンサーを傾斜のあるトレー(写真右側の方が高い)に入れ、これを水平方向に揺動させると、比重の大きいアルミニウムが傾斜を上っていきます(写真上、銀色のサンプル:アルミニウム、黒色のサンプル:非金属)。このトレーを2cmずつ左端から分離後のサンプルを分けていく写真(下)のようになり、トレーの右側になるにつれて、アルミニウムの割合が多くなっていることがわかります。
       



【PETと他のプラスチックの分離】
 回収したPETボトル類に他のプラスチック類が混入するとリサイクルできません。そこで、PETのリサイクルのためにはPETと他のプラスチックの分離が必要となります。
    
しかし、
PETと他のプラスチック類の比重は近いため前述の比重分離は使えません。


研究テーマ: 風力分離によるPETと他のプラスチックの分離
 本研究室ではこのPETと他のプラスチックを分離する方法に風力分離を用いる方法を検討しています。風力分離とは、形状の違いを利用して風の巻き込みやすさの違い(例:タンポポの種は他の草の種と大きさと比重が同じでも風により飛ぶ)により分離する方法です。
 PETボトルとプラスチックの素材の違うPEを1cm四方に切ったの後にブレンダーで激しく切断を行うと写真のようにPETは表面が剥離して形状が変化し、風を巻き込みやすい形状になり、PEは切断後もなめらかな表面になっています。これを風力分離を行うとPETのみが風を巻き込み浮上するために、PETとPEを分離することができます。